アライメント

回旋筋腱板損傷のさまざまな原因

腱板損傷の様々な原因

回旋筋腱板損傷(腱板損傷)とは、名前の通り回旋筋腱板が損傷している状態のことをいいます。

よって、”回旋筋腱板”と”損傷”のそれぞれの意味をご理解いただくと”回旋筋腱板損傷”について、明確にイメージすることができます。

以下のような方にオススメです

① 腱板損傷の意味や原因を理解したい
② 損傷の種類を知りたい、整理したい
③ 年齢別で損傷の特徴に違いがあることを知りたい
④ 腱板損傷の危険因子を知りたい
⑤ 損傷が拡大する危険因子を知りたい

回旋筋腱板とは?

肩関節周囲に存在する棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋の四筋の筋群をさします(図1)。

回旋筋腱損傷とは上記の四筋のうち、一筋または複数の筋が損傷したことを意味します。

回旋筋腱板
肩甲下筋
棘上筋
棘下筋
小円筋

損傷とは?

回旋筋腱板損傷の損傷には以下の三種類があります。

①腱炎
②腱症
③断裂

① 腱炎

腱炎は若いアスリートや中年の方で最もよく見られます。
これは、正常で健康な回旋筋腱板が負傷または炎症を起こした場合に発生します。

多くの場合、繰り返しの頭上活動(絵画、テニス、水泳、野球、バレーボール、重量挙げなど)で発生しやすいのが特徴です。

② 腱症

腱症とは、回旋腱板腱が変性する状態を意味します。

よって加齢の結果として発生します。加齢により回旋腱板腱への血液供給が減少するため、腱にストレスがかかったり怪我をした時に腱の回復が悪くなってしまうことが原因です。

③ 断裂

断裂は部分断裂”と”完全断裂”に分けられます。
回旋腱板断裂(腱が腕の骨から引き裂かれるとき)は、主に中高年で多く発生します。

肩への外傷(転倒または肩への直接の打撃など)、および回旋腱板の筋肉の慢性的な使い過ぎによって引き起こされる可能性があります。

よって回旋筋腱板損傷という診断がついた時には、四筋のうち、どの筋が損傷しているのか、さらに損傷の種類も確認することからはじまります。

腱板損傷と年齢の関係

回旋筋腱板損傷には好発年齢にも特徴があります。

20歳以下では9.7%であるのに対して、80歳以上では62%となり、加齢により損傷のリスクが高まることが分かります1)。
(上記の割合は、症状の有無は関係しておらず、損傷していても疼痛などの症状はない方も含まれています)。

高齢者と若年者 年齢別による損傷の特徴の違い

ここまでの内容で、加齢により損傷リスクが高くなることが分かりました。

その他にも”加齢による損傷”には特徴があります。
それは加齢に伴う腱板損傷は、両側での損傷を呈しやすいということです。

具体的には、66歳以降では両側性の腱板損傷が半分の50%を占めています。
(66歳以降の腱板損傷と診断された方の2人に1人は右と左の両側の腱板損傷をしています)。

ただ、加齢による損傷は、損傷範囲の大きさについては年齢による影響はないことも分かっています1)。

次に”若い方の腱板損傷”の特徴も一つご紹介させていただきます。

若い人の腱板損傷は、交通事故やスポーツ事故などの一発の外傷によるものが多いということです。

交通事故やスポーツ事故は損傷の原因が明確であること、損傷後すぐに対応できることから、手術によって症状が完治することが多いといわれています。

それとは反対に高齢者の腱板損傷は時間の経過とともに徐々に進行して腱板損傷が重症化していくため、病院を受診された時には手術が難しい状態という症例も少なくありません。

腱板損傷の原因

損傷の原因は大きく分けて2つがあります。

①使い過ぎによる損傷
②外傷に伴う損傷

①の使い過ぎによる損傷は、”腱板の腱炎”、”腱症”となりやすく、②の外傷に伴う損傷は、”腱板の断裂”を呈しやすい違いがあります。

腱板損傷の危険因子

以下のような要因が該当する場合には腱板損傷を呈する可能性が高くなります。

① 年齢
② 喫煙
③ 家族歴
④ 姿勢
⑤ その他(オーバーヘッドの反復や高コレステロール血症 等々)

一つずつ解説致します。

①年齢:前述させていただいた通り、加齢に伴う進行性かつ退行性の経過が影響します2)。

②喫煙:損傷の割合を増加させるだけでなく損傷のサイズも大きくしてしまうという報告があり、損傷が大きい場合には手術となる例が増えるため、喫煙は手術件数の増加を助長する可能性も指摘されています3)

③家族歴:40歳未満で回旋筋腱板を有する者は従兄弟までの間で有意な相関関係が報告されています4)。

④姿勢:矢状面からの観察では4つの代表的な姿勢があり、それぞれで腱板損傷になりやすい割合が異なります4)(図2)。
理想的な姿勢では2.9%と明らかに腱板損傷のリスクが低いのがわかります。

・後弯ー前弯姿勢   :65.8%
・フラットバック姿勢 :54.3%
・スウェイバック姿勢 :48.9%
・理想的な姿勢         :2.9%

腱板損傷
姿勢
アライメント
後弯ー前弯姿勢
フラットバック
スウェイバック
理想的な姿勢

⑤その他:外傷、高コレステロール血症、重大な頭上活動を必要とする職業または活動などが報告されています5)。

損傷が拡大する危険因子

腱板損傷のうち部分断裂は損傷が拡大する場合”と”拡大しない場合”があります。

ではどのような場合に拡大してしまうのでしょうか?拡大してしまう原因も4つの危険因子が報告されています。

① 損傷の大きさ
② 症状
③ 部位
④ 年齢

①の損傷の大きさは、大きな損傷ほど損傷している領域が拡大する可能性が高くなります。
ただ、どの程度の大きさの損傷からが拡大するかという明瞭なサイズの境目はまだ定義されていません 6)。

②の症状は、腱板損傷は損傷していても症状が出現する方と出現しない方がいます。
損傷が拡大しやすいのは症状が出現している方で、症状が出現しない方と比較して5倍も拡大する可能性があるという報告があります 6)。

③の部位は、腱板損傷は4つの筋のどれか、または複合的に損傷しているため、損傷した筋により部位が異なります。
その中で前方の腱板損傷の場合には損傷が拡大する可能性高いことが報告されています。

④の年齢は、腱板損傷自体の危険因子にも上がっていましたが、損傷の拡大においても危険因子となっています。
具体的には60歳以上となると拡大する可能性が高いと言われています6)。

本日の内容で”腱板損傷”と診断された時に、ご自分の肩関節がどのような状態であるかを理解でき、年齢的な要因、受傷機転、原因や危険因子などを考慮した分析にお役立ていただけましたら幸いです。

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