前回の記事で肩こりの原因には3種類あることを確認しました。
3種類とは↓↓
①骨もしくは関節が原因の場合
②肩関節周囲の軟部組織の場合
③その両者が組み合わされた場合
前回は①の”骨もしくは関節が原因の場合”を発信しました。
以下をご参照ください↓↓
軟部組織が原因の肩こり
本記事では肩こりの2つ目の原因である”肩関節周囲の軟部組織の場合”について発信します。
軟部組織由来の肩こりの原因にも3つあります。
①外傷後に伴う癒着による拘縮
②不十分な筋活動(姿勢などの影響)
③肩関節周囲炎(五十肩や四十肩とも言われます)
このうち③の”五十肩”について本記事では取り上げます。軟部組織が肩こりに影響する理由は肩関節は浅い関節であり、肩関節周囲の筋など軟部組織の
五十肩は経過がポイントです。様々な経過の記述が報告されていますが、簡潔に3段階に分けられます。
五十肩の3段階の経過
第一段階:痛みが強い時期
第二段階:痛みからコリに移行する時期
第三段階:コリが強い時期
そのため、昔は肩が痛かったけど、現在は肩のコリが気になるという場合は五十肩による肩こりの可能性も考えられます。
肩こりと軟部組織の関係
五十肩の評価では”関節可動域”に注目していきます。
本記事では肩関節の関節可動域にしぼり解説させていただきます。
肩関節は肩甲骨の関節窩と上腕骨の上腕骨頭から構成される関節です。骨模型で肩関節を確認すると非常に浅い関節であることがわかります(図1)。
肩関節は球関節といって、野球のグローブとボールに例えられやすく、肩甲骨の関節窩は凹んでいるので動野球のグローブ、上腕骨の上腕骨頭は凸の球状をしているため野球のボールです。
肩関節はグローブの中にボールがしっかりおさまっているわけではなくて、ボールがグローブから半分以上飛び出しており、かなり浅い形でおさまっているのが特徴です。
そのため肩関節周囲には軟部組織がしっかりと発達し肩が外れないような構造をしています。
このようなことから肩こりの原因には筋などの軟部組織由来の肩こりが発生する可能性があります。
では、ここからは対象者の肩こりの原因が軟部組織由来であるのをの見極める評価方法を解説します。
軟部組織が原因の肩こりの見分け方
肩関節周囲の軟部組織を4つの領域に分けて考えていきます。
①前上方、②前下方、③後上方、④後下方です(図2)。
この4つの領域の中でどの領域の軟部組織が硬いために関節可動域制限を呈しているのか評価します。
肩関節の4つの領域のうち①の肩関節前上方の軟部組織の硬さの評価は、腕は下垂位、肘関節を90度屈曲した位置から外旋します(図3-a)。
肩関節を外旋することで前方の組織が伸長され、また肩関節を下垂にすることで上方の組織が伸長されます。
次は肩関節の4つの領域のうち②の肩関節前下方の軟部組織の硬さの評価は、肩関節は外転位、肘関節を90度屈曲した位置から外旋します(図3-b)。
①と同様で肩関節を外旋することで前方の組織が伸長され、また肩関節を外転することで下方の組織が伸長されます。
3つ目は肩関節の4つの領域のうち③肩関節後上方の軟部組織の硬さの評価は、肩関節は下垂位、肘関節を90度屈曲した位置から内旋します(図4-a)。
肩関節を内旋することで後方の組織が伸長され、また肩関節を下垂にすることで上方の組織が伸長されます。
最後は肩関節の4つの領域のうち④の肩関節後下方の軟部組織の硬さの評価は、肩関節は外転位、肘関節を90度屈曲した位置から内旋します(図4-b)。
③と同様で肩関節を内旋することで前方の組織が伸長され、また肩関節を外転することで下方の組織が伸長されます。
関節可動域の評価は自動と他動で行う理由
軟部組織由来の関節可動域制限の鑑別の場合には、関節可動域の評価は”自動運動”と”他動運動”で評価します。
”自動運動”による関節可動域とは自分の力で関節を動かした時の可動域です。
それに対して”他動運動”による関節可動域とは他の人から関節を動かされた時の可動域です。
なぜ自動と他動で可動域を評価するかというと、検査をした対象の方の関節可動域の問題が自分で動かす筋力に問題があるのか、それともそれ以外の問題であるのかを見極めるために行います。
例えば他動的には肩関節外旋90°であるのに対して、自動では45°までしか外旋ができない場合には、外旋45°以降から90°まで動かす筋力が不足していることが考えられます。
まとめ
本記事では肩関節は解剖学的に浅い関節であるため、肩関節周囲の筋などの軟部組織がしっかり働き肩関節を安定させる必要があること、そのため肩周囲の筋に過度な筋活動が加わった時には、肩周囲の軟部組織に疲労がたまり肩こりの原因になることに触れました。
また軟部組織が原因の肩こりの評価方法については肩関節を4つの領域に分類し、それぞれの領域での鑑別の評価方法を解説しました。
(軟部組織が原因の肩こりに対しては、なぜ関節可動域の評価が必要で、なぜ自動と他動で評価する必要があるのかも解説しました)。
肩関節の4つの領域のそれぞれで具体的な制限因子となる組織が気になると思いますので、次回の記事で発信させていただく予定です。
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