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距骨は4つの骨に挟まれている?
前記事では距骨の骨の形状の特徴についてご確認いただきました。
ここからは関節の内容に移ります。
まず関節を形成するということは、距骨の隣りに存在する骨を確認する必要があります。
距骨に対して以下のような配置になっています。
近位(上位):脛骨と腓骨(下腿骨)(図1-a)
遠位(下位):踵骨(図1-b)
前方:舟状骨(図1-b)
よって、脛骨、腓骨、踵骨、舟状骨と合わせて4つの骨が距骨と接しています。
距骨という一つの骨に対して4つの骨が付着することは珍しく、小さなエリアに骨が密集していることが、接する骨の多さからも理解できます。
(メジャーな骨で大腿骨を例に確認すると、近位は寛骨、遠位は脛骨というように、距骨よりも何十倍も大きな大腿骨であっても、接している骨の数は2つです)。
距骨は足関節の2階に該当する
上記で距骨は小さな骨であるにも関わらず、多くの骨と接していることに触れました。
これはイコール関節の数も多いということです。
足関節は以下のように建物に例えられる場合があります(図2)。
3階:脛骨と腓骨
2階:距骨
1階:踵骨を含めた、その他の足の骨
この建物の例からも、前述した距骨は下腿からの荷重を支え、その荷重を足の骨へ伝達する位置にあることが分かります。
3つの異なる関節面を持つ距骨
距骨のみを取り出して観察すると、距骨の多くの部分が関節面で構成されています(図3)。
なぜ関節面が多いかというと、小さな骨であるにも関わら、多くの骨と接しているためです。
距骨が関係する関節も建物を例にして確認します(図3)。
・3階と2階の間は以下の1関節
①距腿関節(下腿骨と距骨で形成)
・2階と1階の間の関節は以下の2関節
②距骨下関節(距骨と踵骨で形成)
③距舟関節(距骨と舟状骨で形成)
このうち、①の距腿関節と②の距骨下関節の関節面は上下面です。
それに対して③の距舟関節の関節面は前後面です。
よって下腿骨からの荷重は、距骨を介して下方と前方に伝達されます(図4)。
距骨下関節は、前・中・後と3つの領域に関節面が存在する
距骨と踵骨の間の関節が距骨下関節(距踵関節)です。
踵骨と接せる距骨の面を確認するには、距骨を下面から観察する必要があります(図5)。
距骨を下面から関節すると以下の関節面が存在します。
①前方:舟状骨と接する関節面
②中央:踵骨と接する関節面
③後方:踵骨と接する関節面
②と③はどちらも踵骨との関節面です。
よって踵骨との関節面は2つに分かれています。
その理由は間に距骨頸と言われる細くなる部分があるためです。
よって、距骨の関節面は前方の距骨頭と後方の距骨体にあり、間の距骨頸には関節面は存在しません。
距骨下関節が前・中・後に各位置に関節面を形成する理由
他の動物と人と進化で違いで、重要なのが人は二足歩行を獲得したことです。
人の二足歩行では地面に対して、踵から接して、その後に足の裏全体が接して、最後に足の趾が残り、蹴り出すという仕組みです。
よって、地面に踵が接した時には距骨の後の関節面に荷重がかかり、地面に足の裏全体が接している時は、全ての関節面に荷重がかかり、地面に足の趾のみが接している時は距骨の前の関節面に荷重がかかりやすい仕組みになっています。
距骨頭で形成される関節面は動きが大きい??
前記事で距骨は大腿骨と似ていることを書かせていただきました。
よって、ここでは距骨頭を大腿骨頭として考えると、大腿骨頭は球関節である股関節を形成し動きの大きな関節です。
球関節とは凹凸の関係にある関節で、よく野球のボールとグローブに例えられます。
股関節であれば、ボール(凸)側が大腿骨頭、グローブ(凹)側が寛骨臼です。
では距骨ではどうでしょうか?
ボール(凸)側が距骨頭、グローブ(凹)側が舟状骨と踵骨です。
よって距骨頭の部分で形成される関節は、ある程度大きな動きが伴います。
動きが大きいということは怪我のリスクも高まります。
足の骨の怪我のうち70%は距骨に問題があるというデータもあります1,2,3)
よって距骨の動きが悪いと怪我のリスクが高まること、そして距骨は前述の通り血流が乏しいため怪我をすると治りにくいこと、両者を踏まえ、距骨の動きは予防的に訓練しておく必要性を感じます(表1)。
距骨は怪我が治りにくいことの理由に、足根骨の中で唯一、距骨には筋が付着しないことに触れました。
その代わりに距骨には4つの靭帯が付着しています。
距骨の内側には三角靭帯のうち、深層に位置する前脛距部、後脛距部の2つの靭帯が付着します。
そして距骨の外側には外側側副靭帯のうち、前距腓靭帯と後距腓靭帯と外側も2つの靭帯が付着しています。
内側と外側の靭帯を比較した特に臨床で取り上げられやすいのは、損傷する割合が高い外側側副靭帯です(内側の靭帯の損傷は15%であるのに対して、外側の靭帯の損傷は85%とデータとしても圧倒的に外側の靭帯損傷が高いです)。
よって距骨に付着する外側側副靭帯についても記事を書いてみました。
論文的なデータでも距骨は足根骨の中で最も怪我のリスクが高く、それにも関わらず治りにくいことが距骨の問題点でした。
距骨に付着する靭帯が損傷すると距骨へのストレスは勿論増大します。
その結果、距骨に問題を抱えてしまい、将来的には足関節不安定症、さらにには近年増えている、変形性足関節症へと悪化していく可能性が高くなってしまいます(表2)。
よって足関節の外側側副靭帯の知識を身につけて、捻挫はもちろん、足関節不安定症や変形性足関節症にも対応できるようにしていけたらと思っています。
参考文献
1.Melenevsky Y, Mackey RA, Abrahams RB, Thomson NB. Talar Fractures and Dislocations: A Radiologist’s Guide to Timely Diagnosis and Classification. Radiographics. 2015 May-Jun;35(3):765-79.
2.Prasad SA, Rajasekhar SSSN. Morphometric analysis of talus and calcaneus. Surg Radiol Anat. 2019 Jan;41(1):9-24.
3.Bartoníček J, Rammelt S, Naňka O. Anatomy of the Subtalar Joint. Foot Ankle Clin. 2018 Sep;23(3):315-340.