こんにちは。吉田俊太郎です。
本動画は、”腸骨稜”に関しての解説動画です。
タイトル:腸骨稜の謎 なぜヤコビー線はL4-5間を通るのか!?
本ブログでは対象者の方に触れた時、自分の手から感じ取れる情報量を増やせるよう、触診リテラシーを高めることを目標に、普段の評価や治療に役立ててもらえましたら嬉しいです。
最近はYouTubeに投稿すると子供達が喜んでくれるため、定期的に頑張りたいと思っています。
本動画の内容については、以下の通りです。
目次
腸骨稜の位置を確認
腸骨稜は寛骨の上縁を言います(図1)
そして、腸骨稜の前端には上前腸骨棘が、後端には上後腸骨棘が位置します。
腸骨稜を触診する4つの目的
臨床場面で腸骨稜を触診する目的を4つに整理しました。
①寛骨の挙上・下制の評価
②寛骨の前後傾の評価(図2)
③腸骨稜に付着する筋群のランドマーク
④腰椎の高さの評価(ヤコビー線)
上記の記事では、最も簡便かつ正確に、寛骨の前後傾を評価する方法について解説をしております。
本記事の中では、④の腰椎の高さの評価(ヤコビー線)の信頼性ついて解説をしています。
さまざまな呼び名のある腸骨稜の上端
腸骨稜の中でも、特に臨床で触診する機会が多いのが腸骨稜の上端です。
なぜ腸骨稜の上端を触診することが多いかというと、腰椎の高さを評価することができるためです。
具体的には、両側の腸骨稜の上端を結んだ線はヤコビー線と言われ、その線は第4腰椎(L4)と第5腰椎(L5)の間を走行すると一般的には記述されています。
日本では、両側の腸骨稜を結んだラインは、ヤコビー線と言われますが、海外ではさまざまな呼び名で表現されています。
・1895年:Jacoby line(ヤコビー線)
・1900年:Tuffier’s line
・1980年:Intercristal line
・1997年:Supracristal line
・2003年:Intercrestal line
上記の通り、さまざまな呼び名があり、かつそれぞれで、腰椎のどの高さを通るのか?ということも、記載に少々バリエーションがあります。
日本では、一番最初に報告されたヤコビー線の名称が使われています。
ただ、ヤコビー線という言葉が出てから、2024年の現在で129年、約130年が経過しています。
それでいて、なぜ両側の腸骨稜の上端を結んだ線の名前から、腰椎の高さまで統一した見解が出せないのでしょうか?
腰椎の位置は条件により変化する!?
腸骨稜の高さにおいては、条件により変化することが原因として考えられます。
例えば、年齢、性別、身長、測定肢位(立位で測定するのか?、座位で測定するのか?等の姿勢の違い)
また個人的には、腸骨稜の高さは、脂肪組織が多く、筋も発達しているため、脂肪や筋の影響で触診の難易度も少し難しいように感じています。
実際に触診の難易度に影響を与える一つの要因として、BMI(Body Mass Index)が報告されています。
ただ、教科書や令和5年度の理学療法国家試験でも、一般的にヤコビー線はL4-5間を走行するが正解とされています。
なぜ、そのような理解で落ち着いているのか、それをこの後から科学的根拠を元に解説したいと思います。
男性はL4を通り、女性はL5を通ることが多い
図3をご覧ください。立位姿勢でヤコビー線を評価した結果です 1)。
上記の図の中でポイントとなる部分を整理します(図4)。
次に図5をご覧ください。腹臥位(うつぶせ)でヤコビー線を評価した結果です 1)。
上記の図の中でポイントとなる部分を整理します(図6)。
立位と腹臥位のどちらにおいても、ヤコビー線の通る高さは、男性ではL4(中央から下端)の割合が多く、女性ではL5(中央から上端)の割合が多いことがわかりました(図7)。
妊娠に伴うヤコビー線の変化
上記の結果より、女性の場合には、ヤコビー線はL5の高さを通りやすいことがわかりました。
女性の場合には、妊娠した時の腰椎の変化も注目されます。
よって最後は妊娠に伴う腰椎の高さの変化まで確認します。
図8をご覧ください。妊娠に伴う腰椎の高さの変化を示しています 2)。
図8の2色からなる縦棒ですが、白の縦棒が妊娠していない方、黒の縦棒が妊娠中の方です。
妊娠していない方はL4-5またはL5の高さに位置することが多いことがわかります。
それに対して妊娠している方はL3またはL3-4間に多くなることがわかります。
よって、妊娠に伴い腰椎が高い位置に変化していることが理解できます。
妊娠による腰椎の高さの変化は、約10ヶ月という短い期間での出来事であるため、体へのストレスも大きいことが予想でき、妊娠中の腰痛や骨盤痛を訴える方が多いのも納得できます。
最後までお読みいただき有難うございます。
参考文献
1.Snider KT, Kribs JW, Snider EJ, Degenhardt BF, Bukowski A, Johnson JC. Reliability of Tuffier’s line as an anatomic landmark. Spine (Phila Pa 1976). 2008 Mar 15;33(6):E161-5. doi: 10.1097/BRS.0b013e318166f58c. PMID: 18344844. 2.Christopher L, Ultrasound assessment of the vertebral level of the palpated intercristal(Tuffier’s) line, Can J Anaesth. 2010 Jan;57(1):46-9. doi: 10.1007/s12630-009-9208-5. Epub 2009 Oct 27.
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