目次
はじめに
膝蓋骨を中心に、膝蓋骨の上(近位)には”大腿四頭筋腱”、膝蓋骨の下(遠位)には”膝蓋腱”が存在します(図1)。
具体的な厚みの数値も報告されています。
では、大腿四頭筋腱と膝蓋腱の両者の間である膝蓋骨の真上はどのような構造になっているのでしょうか?
体表上から触診にて大腿四頭筋腱と膝蓋腱を確認すると、両者でしっかり厚みのある組織を感じることができます。
しかし、その間の膝蓋骨の真上を触診にて確認するとどうでしょうか?
大腿四頭筋腱や膝蓋腱のようなある程度の厚みのある感触は感じられず、膝蓋骨の真上は薄い皮膚のみが膝蓋骨の上を覆っているような感触しかありません(図1)。
膝蓋骨の直上での大腿四頭筋腱の厚みは7.87mm、膝蓋骨の直下での膝蓋腱の厚みは3.78mm、膝蓋骨の真上での組織の厚みは0.68mmであり、数値的にも明らかに膝蓋骨の真上が最も薄いことが分かります(図1)。
しかし、その薄い膝蓋骨の真上の領域においても、臨床現場では痛みを訴えられる方がいらっしゃいます。
本記事では、膝蓋骨の上下に位置する、大腿四頭筋腱と膝蓋腱の構造について確認した後に、両者の間の膝蓋骨の真上の構造について確認し、膝蓋骨の上に痛みがある症例では、何が原因になっているのか確認します。
- 大腿四頭筋腱の構造:四つの別々の腱から構成される
(膝蓋骨の上に位置する大腿四頭筋腱) - 膝蓋骨の下方に位置する膝蓋腱
(大腿四頭筋を下腿につなげる役割) - 膝蓋骨の真上の形態解剖学から考えられる痛みの原因組織とは?
コラム:膝蓋腱それとも膝蓋靭帯? 解剖学的にはどちらの名称がより好ましい?
大腿四頭筋腱の構造:四つの別々の腱から構成される
(膝蓋骨の上に位置する大腿四頭筋腱)
まず膝蓋骨の上(近位)に位置する”大腿四頭筋腱”の構造を確認します。
大腿四頭筋腱は教科書では大腿直筋、内側広筋、外側広筋、中間広筋の4つの筋の停止腱が一つにまとまり”腱の束”になっていると表現されます。
しかし、実は大腿四頭筋の四つの筋(大腿直筋、内側広筋、外側広筋、中間広筋)の停止腱というのは、細かく解剖すると、それぞれが別れた別々の停止腱として存在すると報告されています2,3)。
それぞれの腱は、深さも異なります。
表層に大腿直筋の停止腱、中間層に内側広筋と外側広筋の停止腱、深層に中間広筋の停止腱が3層構造で存在しています(図2)。
一般的には図2のように膝蓋骨の上(近位)で”大腿四頭筋腱”が確認され、その四頭筋腱は膝蓋骨の上面に付着します。
そして膝蓋骨の下(遠位)で”膝蓋腱”が確認され、膝蓋腱は膝蓋骨の下面に付着します。
図2のような理解では大腿四頭筋の停止の記載が矛盾します。
なぜなら解剖学の教科書で大腿四頭筋の停止を確認すると、大腿四頭筋を介して脛骨粗面と書かれているためです。
図2の理解では大腿四頭筋の停止は”膝蓋骨の上面”と記載されるべきです。
その疑問を解決するには詳細な解剖を確認する必要があります。