腰痛はボリュームが大きいためシリーズで発信しています。
前回の第1回では世界的にみたときの腰痛の現状とご自身や周囲の方の腰痛を比較しながら様々な腰痛のデータをご確認いただきました。
いかに腰痛は社会的、経済的に大きな問題になっていることがご理解いただけたと思います。
第2回の本記事では腰痛に関係する”解剖学”について発信します。
今後の記事では、腰痛の原因として様々な疾患名が出てきます。
その時にどこの部位が問題であるかイメージできるように、まずは解剖学をご確認いただきたいと思います。
□ 脊椎の形態解剖を知りたい(脊椎、椎骨、背骨の違い)
□ 脊柱管の形態解剖を知りたい(脊柱管と椎間孔の違い)
□ 脊椎は部位ごとで役割が異なることを確認したい
□ 脊髄神経と馬尾神経の違いについて知りたい
脊椎の解剖学
脊椎症や分離症などで問題となる”脊椎”※を確認します(図1)。
※脊椎のことを別名で”椎骨”ということもあり、一般用語では”背骨”と言われます。
また似た単語に”脊柱”があります。
脊柱は柱(はしら)の単語の通り脊椎が積み重なったものを示します(第1頸椎から尾骨まで)(図2)。
上方から”脊椎”を観察すると一つしか確認できないパーツと、二つ確認できるパーツとがあります(図1)。
まず一つしか確認できないパーツには、前方の”椎体”、中央の”椎孔”、後方の”棘突起”です。
次に二つ確認できるパーツには、前方に”椎弓根”、側方に”横突起”、後方に”椎弓板”がそれぞれ左右で確認できます。
また関節面も上方からの観察では二つ確認できますが、実は下面にも2つの関節面があるため、一椎骨につき関節面は計四つ存在します。
椎骨は上記の通り、前方・中央・後方と3つのパーツに分けて整理すると理解しやすくなります。
脊柱管の解剖学
脊柱管を上方(図3)からと側方から(図4)観察します。
図1でご覧いただいた椎骨の周囲には他にも様々な組織が付着しています。
まず前方では椎体の上下に椎間板ヘルニアに関係する”椎間板”が存在します。
椎間板は中央の髄核とその周囲の線維輪で構成されます。
さらに椎間板の前後には、前方に”前縦靭帯”、後方に”後縦靭帯”が存在します。
次に中央には”脊柱管”があり、その中を脊柱管狭窄症などで問題になる”脊髄”が走行します。
脊柱管の後方では、もう一つ靭帯である”黄色靭帯”が存在します。
椎孔と脊柱管の違いとは?
椎間孔:一つの椎骨の中央に存在する空洞
脊柱管:いくつかの椎孔が重なり合い管になったもの
脊柱管内の脊髄は骨だけでなく靭帯によっても保護されていることがご理解いただけたかと思います。
脊髄の周囲を保護する組織については表1をご覧ください。
部位ごとの脊椎の役割
ここまで椎骨や脊柱管、周囲の靭帯の解剖学について確認しました。
脊椎は部位を大きく分けると”前方”、”後側方”に分けることができます。
なぜ2つのパーツに分けて記述されるかというと、それぞれで役割が異なるためです。
◯前方構造:椎体、椎間板、前縦靭帯 → 体重支持をし衝撃を吸収する
◯後側方構造:椎弓根、椎弓板、横突起、棘突起、後縦靭帯、黄色靭帯
→ 脊髄および神経根の保護
脊髄神経と馬尾神経
今後は腰痛の疾患編に移っていきますが、その時に”脊髄神経”と記載されていたり”馬尾(ばび)神経”と記載されていたりしますので、ここで脊髄神経と馬尾神経の違いについて整理します(図5)。
まず脊髄神経とは脊柱管の中を走行する中枢神経です。
脊髄神経は第1頸椎から第1・2腰椎の高さまで伸びています。これよりも下方の領域は馬尾神経と言います。
脊髄は脊柱の発育よりも遅いために脊髄の下端は次第に引き上げられます。
よって頸椎や上部胸椎の脊髄は脊柱の高さが等しいですが、下部胸椎よりも下の脊髄は脊柱よりも高さが上に位置します。
そのため下部胸椎以下の脊髄神経や馬尾神経は横方向には走行せず斜め方向に走行せざるをえない形態となります(図5)。
第2回では腰痛の原因を確認する上で基礎となる”脊椎(椎骨)”、”脊柱管”、脊髄神経、馬尾神経の解剖学をご確認いただきました。
次回の第3回の腰痛の教科書では、腰痛の原因について解説しています。
具体的には脊椎症・脊椎すべり症、脊椎分離症についてです。これらの違いに興味がありましたらご覧下さい。