前回の記事では不良姿勢について発信させていただきました。
前回は不良姿勢の中でも”胸椎の後弯”に注目しました。
膝関節のアライメント異常
本記事では膝関節を前額面(前方または後方)から観察した時の不良姿勢について注目します。
具体的には仕事の中でも相談をいただくことの多い内反膝(O脚)、外反膝(X脚)、XO脚です(図1)。
例えば内反膝では内側型の変形性膝関節症のリスクを高め、さらに変形性関節症の進行を加速させることが報告されています1)。
また内反膝や外反膝を呈した変形性膝関節症に対して適切な治療が行なわれない場合には変形が進行し、手術となる例も多く経験します。
そのような意味で膝関節の前額面からのアライメント(関節の位置)の正確な評価は重要です。
さらに膝関節を手術される場合においても膝関節のアライメント評価は重要です。
その理由は、もしアライメントが不良な位置で手術をしてしまった場合には、手術部の部品(コンポーネント)が初期に故障してしまうリスクなどが高まるためです。
以上のように膝関節疾患において、前額面からのアライメント評価は手術の有無に関わらず重要です。
それにも関わらず膝関節のアライメントの提示の仕方は教科書や論文によって異なり複雑な印象があります。
膝関節の静的な3つのアライメント軸
立位姿勢という動きの伴わない静的な状態を条件にした時に、膝関節のアライメントを前額面から観察する場合、代表的な軸には以下の3軸があります(図2)。
①垂直軸
②機能軸
③解剖軸
※本記事では歩行など動的な状態で使用する運動軸には触れておりません。
① 垂直軸とは(赤色の線)
恥骨結合の中心から遠位に延びる垂線
② 機能軸とは(青色の線)
大腿骨頭の中心から足関節の中心までの垂線です。
機能軸は大腿骨軸と脛骨軸に細分化することもできます。
・大腿骨の機能軸:大腿骨頭の中心から遠位の大腿骨の内・外側顆の中心を結ぶ線
・脛骨の機能軸 :脛骨の中心から足関節の中心を結ぶ線
また機能軸と垂直軸の間には約3°の傾斜があります(イラスト内にも3°の記載)。
③ 解剖軸とは(緑色の線)
大腿骨の解剖軸と脛骨の解剖軸から構成されます。
・大腿骨の解剖軸:大腿骨の中央(大腿骨の髄管を近位から遠位に引かれた線)
・脛骨の解剖軸 :脛骨の中央(脛骨の髄管を近位から遠位に引かれた線)
また解剖学軸と機能軸の間には約5°~7°の傾斜があり(イラスト内にも6°の記載)、解剖学軸と垂直軸の間には9°の傾斜があります(イラスト内にも9°の記載)
本記事では膝関節を前面から観察した時のアライメント異常について注目しました。
変形性膝関節症の方を担当する際には、お会いする前にレントゲン上でアライメントの確認を行うことが多いように思います。
それにも関わらずアライメント軸について詳しく説明された物が少なかったため、まずは膝関節の代表的な3つの軸を確認しました。
ちなみに膝関節の静的なアライメント軸には他にも脛骨近位内側角(medial proximal tibial angle:MPTA)など応用的な軸がありますが、本日の3軸で膝関節のアライメントは概ね説明できます。
臨床でよく耳にするFTAやミクリック線なども説明ができますので、まずは本日の3軸をご確認いただけましたら幸いです。
次回の記事では、3つの軸からどのように内反膝、外反膝の判定を行っているのか確認します。
参考文献
1. Brouwer GM, van Tol AW, Bergink AP, Belo JN, Bernsen RMD, Reijman M, Pols HAP, Bierma-Zeinstra SMA. Association between valgus and varus alignment and the development and progression of radiographic osteoarthritis of the knee. Arthritis Rheum. 2007;56:1204–1211. doi: 10.1002/art.22515.