こんにちわ。吉田俊太郎です。
本ブログは手から感じ取れる情報量を増やし、触診リテラシーを高めることを目標に、普段の評価や治療に役立ててもらえましたら嬉しいです。
本記事は具体的な触診方法になりますの、動画の方が伝わりやすいと思いますので、記事では理解しきれなかった場合にはYouTubeもご参照ください。
今回取り上げる触診部位は”前腕の遠位でランドマークとなる骨”です。
具体的には以下の六つの部位の触診方法について解説します。
① 橈骨の茎状突起
② 尺骨の茎状突起
③ 橈骨のリスター結節
④ 橈骨の尺骨切痕
⑤ 尺骨の尺骨頭
⑥ 遠位橈尺関節(④と⑤の間で関節は形成される)
上記部位の触診は以下のような方にオススメです。
① リスター結節を触診することで、腱鞘炎の原因の筋腱を鑑別できるようになりたい
② 遠位橈尺関節を触診することで、前腕の回内・外の評価・治療に役立てたい
③ 橈骨の茎状突起を触診することで、上肢長・前腕長の評価を正確に実施できるようになりたい
④ 尺骨の茎状突起を触診することで、TFCCの評価・治療に役立てたい
目次
橈骨の茎状突起の触診方法と触診のポイント
橈骨の最も遠位部で隆起している領域が橈骨の茎状突起です。
臨床では前腕長や上肢長の遠位のランドマークとしても触診する部位です。
橈骨の茎状突起の触診のポイントは、最も隆起しているのは橈骨の外側面であるということです(図1-a)。
よって、触診する時には橈骨の外側面を近位から遠位に辿ることで触診しやすくなります。
コラム:なぜ上肢長は解剖学的肢位で測定するのか?
現在は理学療法士の養成校の教員をしておりますが、理学療法評価学という授業があり、その中で形態測定の実技を担当しています。
その授業の中で上肢の長さを測定する時には解剖学的肢位で測定することを伝えています(図2)。
上肢長含めた長さの測定についてはメジャーを使って実施しますが、原則として最短距離を測定するというルールがあります。
よって、上肢長のランドマークは肩甲骨の肩峰と橈骨の茎状突起となっていますが、肩峰は身体の外側面に位置しますので、最短距離で測定するには、橈骨の外側面にある領域をランドマークにする必要があります。
ただ、前腕の骨である橈骨と尺骨は前腕の回内・回外という動きが可能であるため、ポジションによっては橈骨の茎状突起が外側面ではなくなってしまいます。
橈骨の茎状突起が外側面に位置させるためには、前腕を回外する必要があるため、前腕回外位となる解剖学的肢で測定することになります。
尺骨の茎状突起の触診方法と触診のポイント
橈骨同様に尺骨も最も遠位部で隆起している領域が尺骨の茎状突起です。
臨床ではTriangular Fibrocartilage Complex(TFCC)や尺骨側のインピンジメント症候群で触診する機会がある領域です。
尺骨の茎状突起の触診のポイントは、最も隆起しているのは尺骨の背側面であるということです(図1-b)。
リスター結節の触診方法と触診のポイント
リスター結節は橈骨の遠位でかつ背側に位置する隆起です。
臨床では伸筋区画の筋腱の腱鞘炎において、どの筋腱が痛みや違和感の問題部位であるか鑑別するための重要なランドマークです。
橈骨のリスター結節の触診のポイントは2つあります。
一つ目のポイントは橈骨の茎状突起と高さを比較すると、わずかにリスター結節の方が遠位に位置することです。
二つ目のポイントは第2または3指の延長線上に位置することです(図3)。
二つ目のポイントである第2指の延長線上にある場合と第3指の延長線上にある場合とで、バリエーションがある理由については、下記の記事で詳しく書いていますのでご参照ください。
橈骨の尺骨切痕の触診方法と触診のポイント
ここまで橈骨の遠位のランドマークは、橈骨の茎状突起とリスター結節を取り上げました。
橈骨の遠位のランドマークとして、三つ目に取り上げるのが”尺骨切痕”です。
尺骨切痕という名称は頭に尺骨とつくため、尺骨の名称であると間違えやすいので注意してください。
解剖学のテストや過去の国家試験のイラスト問題でもひっかけで出題されています。
尺骨切痕の触診のポイントはリスター結節と同じ高さに位置しているということです。
よって、尺骨切痕はリスター結節を触診してから、触知すると分かりやすくなります(図4)。
尺骨切痕はこの後に取り上げる尺骨頭と関節面を形成しているため、橈骨と尺骨が関節を形成している段階では、明瞭に観察することはできません。
明瞭に観察するためには、橈骨と尺骨を切り離し、尺骨頭と連結していた部分を観察する必要があります。
橈骨のみを取り出した骨模型で観察すると、凹んだ形状をしていることが理解できます(図5)。
尺骨の尺骨頭の触診方法と触診のポイント
ここまで尺骨のランドマークは尺骨の茎状突起のみを取り上げました。
尺骨の遠位のランドマークとして、二つ目に取り上げるのが尺骨頭です。
尺骨頭の触診のポイントはリスター結節と橈骨の尺骨切痕と同じ高さに位置しているということです。
よって、尺骨頭もリスター結節を触診してから、触知すると分かりやすいです(図4)。
橈骨の尺骨切痕でも取り上げた通りで、下橈尺関節を形成する領域です(図6)。
終わりに
触診は読んだり聞いたりすることで学ぶことは難しく、触診は触診にて学ぶことができると思っています。
また、触診する部位である骨や筋は、皮膚や衣服によって直接観察することはできません。そのため、必ず体表上(皮膚の上)にペンを使いマーキングすることで視覚化するようにしてみてください。
見て、触れるだけでなく、ぜひマーキングを実施して視覚化して練習してみてください。
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