体幹編

〜速く泳ぐための水中姿勢〜

速く泳ぐための水中姿勢

本記事では”水泳選手の泳ぐ時の姿勢”について注目します。

腰痛や膝痛などで取り上げられることの多い”姿勢”ですが、スポーツ選手においても怪我の予防の観点から”姿勢”は重要です。

水泳が怪我の予防やリハビリで選択される理由

スポーツの中でも本日は”水泳”に注目します。

水の中での姿勢ということで特殊な感じを受けられるかもしれません。
ただ、水泳に注目した理由は、水泳は学校の体育の授業でも採用されており、多くの方が小さい頃から馴染みのあるスポーツであることから記事の内容がイメージしやすいと思ったためです。

皆様は水泳にどのようなイメージをお持ちでしょうか?

水泳選手は陸上と違い浮力により怪我をしづらいというイメージやリハビリメニューでプールが取り入れられるくらいなので、むしろ怪我の予防になるスポーツというイメージはないでしょうか。

実際に水中での運動は理学療法でも使用されることがあります。

私が勤めていた病院でもリハビリでの機能訓練の後に、併設されているジムでプールトレーニングの指示が出る方を沢山経験してきました。

上記は水中での運動は重力の影響が少ないため関節の痛みや組織の損傷後のリハビリとして推奨されているためです。

また、水中での動きに対抗できるようになるには、筋力と持久力が必要で、継続することで心臓血管系と呼吸器系を活性化し全体的な運動への適応力が向上すると言われています。

リハビリ目的の水泳と競技としての水泳は異なる

水泳選手を担当されている先生方は上記のような身体への良い面ばかりではなく、怪我も多い競技であるというご感想もお持ちではないでしょうか?

具体的には大抵のスポーツは陸の上での競技ですので、水泳選手を陸上競技の選手と同じ見方で評価やアプローチをして良いのかという疑問で悩まれることが多いと思います。

また、水泳選手を現場でみている先生は陸上競技と同様もしくは部位によってはそれ以上に水泳選手の怪我は多いという印象を持たれていると思います。

これは”リハビリやレクリエーションが目的の水泳””タイムを競う水泳”では、同じ競技であっても、全く異なるものだということです。

よって、スポーツとしての水泳はタイムを競うスポーツであるため、速く泳ぐことにフォーカスされます。

速く泳ぐために重要な2つの視点

速く泳ぐためのポイントは何かというと”推進力”と”抵抗力”のバランスです(図1)。
この”推進力””抵抗力”は水泳選手を診る時のポイントにもなっています。

速く泳ぐポイント
推進力
抵抗力

推進力”とは前方へ進む時には水の抵抗力に対して体から生み出される推進力の強さを意味し、水泳では上肢の水かきや下肢のバタ足などが該当します。
”抵抗力”とは水の抵抗を少なくする体の使い方を意味し、その時に泳ぎ方の姿勢が大きく影響します。

両者のバランスがポイントであると前述させていただきましたが、両者は互いに関係します。

水の抵抗力を強く受ける水中姿勢の場合には、それに対抗するだけの大きな推進力が必要になります。
大きな推進力はそれだけ身体にはストレスが生じるため怪我にも繋がりやすくなります。

よって本記事は姿勢についての内容を発信させていただいているため、2つの重要な視点のうち”抵抗力”について例を挙げながら解説させていただきたいと思います。

水の抵抗力を小さくするための体幹機能

抵抗力を小さくする時の考え方は”水面と平行な姿勢”であるということです。
ではどのような体幹の姿勢であれば水の抵抗力が小さくできるのでしょうか。

水の抵抗力を評価するストリームラインテストとは

具体的な評価方法として陸の上でもできる”ストリームラインテスト”を紹介させていただきます(図2)。

テストの姿勢は踵を壁につき足は股関節幅だけ離します。次に上肢を挙上します。
その時に下から踵、殿部、背中の上部、頭、手の甲が壁についているかを評価します。

図2-Aは条件を満たしているため抵抗力の少ない機能が備わっています。
それに対して図2-Bは頭や上肢が壁から離れており、水の抵抗力を強く受ける姿勢です。

図2-Bのような姿勢は水の抵抗力を大きく受けるため怪我のリスクが高まります。

姿勢評価
ストリームラインテスト

本記事では臨床で水泳選手を担当された時に実際の競技現場であるプールサイドで評価やアプローチを行うことは難しい場合が多いので、リハビリ室でも行うことができる評価方法をご紹介させていただきました。

お読みいただいた先生方の臨床の一助になれましたら幸いです。

関連記事

① 良好な立位姿勢とは
  良い姿勢の定義から具体的な立位姿勢の評価方法まで解説しました↓↓

良好な立位姿勢の評価方法
良好な立位姿勢とは 下記の記事では腱板損傷の危険因子を挙げました。その中の一つに”姿勢”が関係していました。 https://shuntaroblo...

②不良姿勢の2つの原因と具体的な評価方法について解説しました↓↓

不良姿勢の2つの原因 不良姿勢の鑑別方法
不良姿勢の2つの原因と鑑別方法 前回の記事では良好な立位姿勢の定義や具体的な評価方法について発信しました。(下記に添付させていただきます) https://sh...

参考文献
1. Natalia Radlińska, Arkadiusz Berwecki, The assessment of range of motion in selected joints in competitive swimmers, Antropomotoryka. Journal of Kinesiology and Exercise Sciences JKES 70 (25): 00-00, 2015
2. FJ Nugent, Strength and Conditioning Considerations for Youth Swimmers, Strength and Conditioning Journal, April 2018, DOI: 10.1519/SSC.0000000000000368