体幹編

第4回:腰痛の教科書

前回の第3回腰痛の教科書から、腰椎の分類について発信しています。
腰痛は所見の違いにより大きく分けて以下の3つに分類されました(表1)。

a 放射線学的所見
 ①脊椎症 / ②脊椎すべり症 / ③脊椎分離症
b 神経学的所見
 ①脊柱管狭窄症 / ②神経根障害 / ③坐骨神経痛 / ④馬尾症候群
c 臨床的所見
 ①脊柱後弯症 / ② 脊柱前弯症 / ③脊柱側弯症
                 表1

この中でaの放射線学的初見の3つの疾患については、『第3回の腰痛の教科書』で確認しました。

骨・関節が原因の腰痛
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本記事では、bの神経学的所見の中の一つ”脊柱管狭窄症”について解説します。

以下のような方にオススメ

□脊柱管狭窄症による症状が片側の例と両側の例がある理由を知りたい
□脊柱管狭窄症を専門的な3つにタイプに分けて評価することができるようになりたい

脊柱管狭窄症の症例で経験したこと

腰痛の患者さんやクライエントさんを担当させていただいていると、最も診断名として多いのが“脊柱管狭窄症”であるように思います。

私自身も脊柱管狭窄症と診断がついた患者さんはこれまで数多く担当させていただきました。

その中で脊柱管狭窄症の患者さんのお悩みで多いのは、腰痛よりも、殿部や下肢の痺れや重苦しさにより、歩行に支障が生じ、その結果、日常生活のレベルが下がってしまっている方を多く経験します。

特に歩行や立位保持の時間が長くなると、徐々にその症状が強くなる傾向にあります。

私が東京に来てから感じたのは、東京の方は外での移動が自家用車ではなく公共交通機関を利用される方が多いため、電車やバスの中で立っていることが大変で立位保持に悩みを抱えている方を多く担当させていただきました。

ちなみに歩行距離と歩行速度が患者の健康と長寿の重要な指標であることが示されていることからも1)、脊柱管狭窄症により歩行障害が発生することは健康や長寿にも影響します。

ただ、脊柱管狭窄症という診断でありながら、症状は個々人で異なることも経験的に感じられている先生も多いのではないでしょうか。

そのようなことからまずは脊柱間狭窄症という診断でありながら、痺れや重苦しさにバリエーションがあることや、前かがみ姿勢を取ると症状が改善する(間欠性跛行)理由などを解剖学的な視点から御確認いただきたいと思います。

症状が片側の例と両側の例がある理由

脊柱管狭窄症でも症状にバリエーションがある理由は狭窄する箇所によってタイプが分けられるためです。

一般書では腰部脊柱管狭窄症は馬尾神経が圧迫される中心型狭窄症と、神経根が圧迫される外側型狭窄症に分類されます。

中心型の場合には馬尾神経が狭窄されるため、進行すると両側の殿部や下肢の運動麻痺や歩行障害、さらにには排尿困難などの症状が出ます。

それに対して外側型狭窄症は神経根が狭窄されるため、片側性の下肢の痺れや痛み、筋力低下が出現します。

以上の通り、まずは症状が両側性の場合には中心型、症状が片側の場合には外側型と覚えると、症状にバリエーションがあることが理解しやすいと思います。

 脊柱管狭窄症の3つのタイプ

本記事では上記の2つに追加して3つのタイプに分類し解説をさせていただきます(図1)。

①中心狭窄(central canal):脊柱管中央部で発生(図1-a)。
②外側狭窄(lateral recess):椎間関節の下の領域での狭窄(図1-b)。
③神経孔狭窄(neural foramen):椎間孔の狭窄(図1-c)。

①は中心狭窄です(図1-a)脊柱管中央部で発生する狭窄症です。

脊髄(頸椎や胸椎部での狭窄症の場合)または馬尾神経(腰椎での狭窄症の場合)が狭窄されます。

すべり症が元で発生するケースが多いのが特徴です。
腰椎が前方に滑ることによって馬尾神経が圧迫されます(すべり症については前回の記事もご参照ください)。

②の外側狭窄と③の神経孔狭窄はともに外側の神経根が問題となるタイプですが、狭窄される部位が原因が異なるために、別のタイプとして分類されています。

②外側狭窄とは椎間関節の下の領域で発生する狭窄症で神経根を圧迫します(図1-b)。
関節の部分であるため脊椎症がもとで発生するケースが多いのが特徴です(脊椎症については前回の記事をご参照ください)。

③神経孔狭窄とは椎間孔の領域での狭窄で神経根を圧迫します(図1-c)。
椎間関節の位置がずれることで発生します。

本記事では脊柱管狭窄症と診断された患者さんやクライエント様がいらっしゃった際に、まずは症状を元にして3つのタイプのうち、どのタイプであるのかを御確認いただく時のご参考になりましたら幸いです。

狭窄の部位が異なることで、アプローチの方法や生活指導のポイントも変わってきますので、脊柱管狭窄症と診断のあった際には3つのタイプにより症状にもバリエーションがあると認識した上で介入していただけたらと思います。