体幹編

第3回:腰痛の教科書

骨・関節が原因の腰痛

腰痛はボリュームが大きいためシリーズで発信させていただいております。

第1回では世界的にみた腰痛の現状とご自身や周囲の方の腰痛を比較しながら様々な腰痛のデータを確認しました。

なぜ腰痛治療は難しい?知っておきたい腰痛の一般的事実
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第2回では腰痛の原因を確認する上で基礎となる脊椎、脊柱管、脊髄神経などの解剖学を確認しました。

腰痛を読み解くための解剖学
第2回:腰痛の教科書 腰痛はボリュームが大きいためシリーズで発信しています。 前回の第1回では世界的にみたときの腰痛の現状とご自身や周囲の方の腰痛を比...

第3回の今回は腰痛は腰の痛みという病名ではなく症状です。
よって腰痛を発生させてしまう様々な病気を整理し確認していきます。

これから解説させていただく腰痛の原因の分類は第2回腰痛の教科書で確認した、解剖学な名称の理解が不可欠であるため、第2回をお読みいただいてから先にお進みください。

以下のような方にオススメ

□腰痛を所見の違いから整理して覚えたい
□脊椎症が原因の腰痛メカニズムを知りたい
□脊椎すべり症が原因の腰痛メカニズムを知りたい
□脊椎分離症が原因の腰痛メカニズムを知りたい

腰痛の様々な分類方法

腰痛の分類は様々な観点から特徴付けられます。

最も一般的な分類の仕方は放射線学的所見からの分類です(表1-a)。
次に神経学的所見からの分類です(表1-b)。
最後に臨床的所見からの分類です(表1-c)。

a 放射線学的所見
 ①脊椎症 / ②脊椎すべり症 / ③脊椎分離症
b 神経学的所見
 ①脊柱管狭窄症 / ②神経根障害 / ③坐骨神経痛 / ④馬尾症候群
c 臨床的所見
 ①脊柱後弯症 / ② 脊柱前弯症 / ③脊柱側弯症
                 表1

本記事では放射線学的所見からの分類についてで、3つの運動器疾患(脊椎症、脊椎すべり症、脊椎分離症)について整理します。

脊椎症

脊椎症は、脊椎の骨(椎骨)と椎間板の加齢に伴う変化を意味します
加齢に伴い椎骨同士の間に位置する椎間板が硬くなり破壊される場合があります。そうなると椎体同士がぶつかり合い椎骨がすり減り、骨棘が形成されることもあります。

また脊椎の後ろの椎間関節の軟骨も加齢に伴い摩耗し骨同士がぶつかり合い関節炎を呈することがあります。

よって脊椎症とは”椎骨の変性 ”と”脊椎関節の関節炎”の発症の両方が脊椎症と見なされます(図1)。

これらの変化は、しばしば”椎間板変性症”および”変形性関節症”とも呼ばれます。

これらの変化が常に症状を引き起こすとは限りませんが、軽度から重度までに及ぶ腰痛の原因となる可能性があります。

症状は腰部の痛みの他に、骨棘が神経根または脊髄を押している場合は殿部と下肢にしびれ、うずき(チクチク)、脱力感、または痛み、電撃痛(ビーンと痛みが走る)がある場合があります。

※イラストのように左側の神経根のみが圧迫させている場合には片側(図1の場合には左側)のみの殿部と下肢にしびれが出現します。

脊椎すべり症

脊椎が不安定になる状態です。これは椎骨が必要以上に動くことを意味します。
椎骨がずれて下の椎骨に滑り込みます。神経に圧力がかかり、腰痛や下肢痛を引き起こす可能性もあります(図2)。

深刻な脊椎すべり症は、馬尾症候群呼ばれる別の症状を引き起こすことがあります。
これは馬尾と呼ばれる腰の一部の神経根が圧迫される深刻な状態です。下肢の感覚や排泄の感覚を低下消失させる可能性があります。また馬尾神経の障害は両側の下肢に症状が出現します。

脊椎分離症

脊椎すべり症とペアで紹介されることの多いのが脊椎分離症です。
分離症は小児および青年の腰痛の一般的な原因です。

脊椎分離症は椎間関節の亀裂または疲労骨折です(図2)。
体操、サッカー、ウェイトリフティングなど、腰に繰り返しストレスがかかるスポーツに参加する青年に発生することが多いのが特徴です。

疲労骨折後に骨自体が弱くなり支持能力低下から椎骨を脊椎内の適切な位置を保持できなくなった状態が”すべり症”です。
分離症の多くの例は”すべり症”も併発しています。

まとめ

本記事では放射線(レントゲン上)から診断される3つの疾患(脊椎症、脊椎すべり症、脊椎分離症)について、それぞれの違いについて取り上げました。

また腰痛の症例の方は、殿部から下肢にかけての疼痛や痺れを伴う症例が多いこと、さらに症状が片側のみの症例と症状が両側の症状の症例が存在する理由も解説させていただきました。

ぜひご担当された患者さん、クライエントさんの症状を確認されるときのご参考になりましたら幸いです。

次回の第4回腰痛の教科書では神経学的所見から診断される ”脊柱管狭窄症”について解説いたします。

第4回:腰痛の教科書 前回の第3回腰痛の教科書から、腰椎の分類について発信しています。腰痛は所見の違いにより大きく分けて以下の3つに分類されました(表1)。...