こんにちわ。吉田俊太郎です。
本ブログでは対象者の方に触れた時、自分の手から感じ取れる情報量を増やせるよう、触診リテラシーを高めることを目標に、普段の評価や治療に役立ててもらえましたら嬉しいです。
触診の精度や正確性を高めるには、目的の部位の解剖学的情報が多ければ、多いほど触診能力が高まることは様々な部位で報告されています。
そのようなことから、本記事は触診の精度を高めるための解剖学的情報に関する記事を取り上げます。
また、このご時世、基本的な情報は溢れていますので、本ブログでは他では見たことのない内容を意識して作成しています。
本記事では”遠位橈尺関節”の動きについて解説します。
(本記事は途中よりプレミアム記事になります)
具体的には遠位橈尺関節は前腕の骨である橈骨と尺骨の2つの骨にて、前腕の回内・回外をつかさどる車軸関節です(図1)。
前腕の回内・回外をスムーズに行うためには、橈骨と尺骨はそれぞれ滑り運動も伴います。
本記事では、尺骨と橈骨が、それぞれどの方向に滑るのか、どの位の量を滑るのかを整理し、触診するときの誘導の方向と量を知ることを目的としています。
遠位橈尺関節の動きを確認する前に、遠位橈尺関節の形状をご理解いただいた方が分かりやすいため、前記事もご参照ください。
目次
遠位橈尺関節の動きに注目する臨床的な理由
前腕の回内・回外にて不安定感や痛みなどを訴えられる方に対して、皆様はどのように評価しアプローチをされますでしょうか?
また、なぜ遠位橈尺関節の動きについて確認するのでしょうか?
まず、遠位橈尺関節に不安定性や痛みを訴えられた方を担当した際には、その方の遠位橈尺関節に触れ、適切な方向に徒手にてサポートすることで、不安定感や痛みが軽減または消失するか評価されるのではないでしょうか。
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よって、遠位橈尺関節の正しい運動方向を理解し、徒手にて正しい方向にサポートができると、その方の不安定感や痛みが出現する方向や理由を知ることができます。
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その結果、アプローチとして、正しい方向への運動を指導することができるようになったり、運動療法を考える上でも大きな材料になります。
もし、これらのことを知らず、正しい運動方向と反対に徒手的に誘導してしまった場合には、リハビリ後に不安定感が強くなってしまったり、痛みが強くなってしまったりと、悪化させてしまう可能性も考えられます。
そのような理由から、前腕の回内・回外時の遠位橈尺関節の正しい運動方向を確認していきます。
遠位橈尺関節で滑り運動が生じる理由
遠位橈尺関節は前腕の回内・回外の動きに関与します。
遠位橈尺関節を凹凸の関係で表現すると、橈骨の尺骨切痕は凹面、尺骨の尺骨頭は凸面です。
以下より
・凹面である橈骨の尺骨切痕を”橈骨側”と表記
・凸面である尺骨の尺骨頭を”尺骨側”と表記
橈骨側、尺骨側の両骨で、前腕の回内・回外の運動時に近位・遠位への移動(図2)と、背側・掌側への移動が伴います(図3)。
よって、遠位橈尺関節は回転運動(前腕の回内・回外)と同時に滑り運動(近位・遠位への移動と背側・掌側への移動)も伴います。
なぜ、前腕の回内・回外の運動時に、滑り運動も生じるかというと、凹面の橈骨側と凸面の尺骨側のサイズが異なるためです。
凹面である橈骨側の直径は約30mm、凸面である尺骨側の直径は約16mmとの報告があります(図4)。
サイズが異なることで、関節の間に隙間ができ、滑り運動が生じます。
橈骨側の滑り運動、具体的な滑る方向と距離
まず尺骨上で橈骨側がどっち方向に移動するか確認します。